七々那ナナさんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)
太陽に向かって歩いてきてねって言われたせいで私は迷子
ゆうやけは東京タワーに盗まれた 都会の空はいま雨になる
青空のむこうのむこうのむこうにはたぶんでっかいモンゴルがある
相性の悪い男とするときは死角に入って変顔してる
「永遠にいっしょにいよう」と言う人がわたしの道をぐちゃぐちゃにする
そうなのか 私みたいなやつだからうちあけられることがあるのか
すぐそばをスーツのカナが歩いててわざと降りなかったのさっきのバス停
あのちゅーが最後だったということは 眠眠打破で打破するつもり
"必要としてくれる人が多いほう" 卒業式にバイトを入れた
コマンドを「ぼうぎょ」にしても半分は傷つくのなら常に「こうげき」
「先輩は利き手が左なんですね」優しく伝えてくれてありがと
絶対に人を傷つけない君は傷つけかたを熟知している
好きだけじゃ上手くいかない恋なんて 知ってしまった17の夏
街中にスカルプチャーが香るだけで振り向くようになってしまった
くだらないうそをつくとき目をそらす うそが下手だと信じていてね
あんなにも子ども嫌いの友人は産んで、私は子どもが好きで。
あたたかくやさしい瞳で「がんばれ」と命令形を使う人たち
宇宙から逆にふわふわ見上げたら 東京ってば、こんなに、銀河。
「来世では優しい人になりたい」と言った少女の来世が私
こうやって人と笑っているうちに笑い話になりますように
(written by 七々那ナナ:http://www.utayom.in/users/439)
優しい人になりたくて生まれ変わったのに、ナナさんの短歌の主人公はいまでもずっと迷子のままだ。この人が詠む短歌の語り手が生きている日々は、なんでこんなにもままならないんだろう。
女性の感情がストレートに表現された歌が多い。それは時には男に対して狡猾な仮面をかぶって振る舞う女性であったりするが、多くの場合、周りの環境に振り回されて自分自身にしがみついて耐えている女性だ。
ところで、僕はいま、このコメントを書くことを躊躇してしまっている。僕がどれだけナナさんの短歌に対してコメントを書きつらねたとしても、ナナさんの短歌が放つ熱を冷ましてしまう結果にしかならないんじゃないかと思ってしまうからだ。
上に引用した20首を読んで何かしらを感じた人は、リンクからうたよみんの歌人ページに飛んで、ナナさんの短歌を一気に読んでみるのがいい。僕のコメントを読んでいる暇があったら。そう思う。
大切なものがない部屋 発泡酒の空き缶だけがきらきら光る (根本博基)