読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

人生ぬるま湯主義

つれづれなるままに以下略

あんず和菓子さんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

じっくりとコトコト煮込んだ恋心 スパイスで あっ 振りすぎちゃった

 

法則に気づいた あたし 恋すると 苺ミルクをちょっぴり残す

 

2ミリずつずらした机ゆくゆくはきみの隣に着く予定です

 

侮れぬ小指同士のお約束 以後、積極的に使います

 

漱石が好き」と綺麗な三日月の夜に告げるその不器用さ 好き

 

女子大生! 寝るなら寝るで肩貸すよ! どうせ終点まで降りないし!

 

さようなら また会いましょう いつかまた 出来れば明日の午前中でも

 

嬉しいな  こんなに噂してくれるなんてハクションしあわへクション

 

格安のお揃いシャンプー買ってみた 枝毛増えたがきみの香りだ!

 

この際ね 熱は出ちゃって欲しいんだ あなたの風邪を貰いたいんだ

 

「あなたって、空気みたいね」「褒めてるの?」「そうよ、いないと息苦しいし」

 

あ、もしもし わたくし赤い糸電話サービスですが はなしませんか?

 

ミルクティ、くちづけしよう 今日だけはちょっと多めにシュガーを添えて

 

クッキーは焼きたてこそが至高です 冷めない距離に住んでみません?

 

「女子校のバレンタインを知ってるか」「ああそれはもう戦場らしい」

 

鳩でさえ口づけし合う春なのに おまえときたら わたしときたら

 

叶わない恋のサンプルと呼ぶにはちょっと手厳しすぎやしないか

 

疲れた日いつも頼むの梅サワー きみの名字に似てるだけです

 

「好き、嫌い」ちぎる花びらいつの間に「許す、許さない」になったんだ?

 

長時間 熟成させた恋心 オーブンで焼いてみました 焦げた

 

(written by あんず和菓子:http://www.utayom.in/users/690

 

 

 

 

一字空け、鍵括弧、句読点。和菓子さんの短歌には、読み手に読むリズムを強制するような修辞が多い。しかも、そうやって指定されるリズムが、多くの場合、57577をスラスラ読んでいくようなリズムではない。読み手は立ち止まらなくていいところで立ち止まることになる。なぜか? それは短歌の語り手の思考が、そこで一度止まっている、スムーズに流れていないからだ。

見渡すと、句またがりの歌も多い。これもまた、和菓子さんの短歌独特のリズムを生みだしている。

ぴったり57577になっていて、特に立ち止まる必要もなく読める歌では、たいてい、語り手は自信満々で何かを語っている。

そう、語り手が誰かに語りかけているスタイルの歌が多いのも特徴だ。語りかけてはいるのだけれど、それが相手に届くことを最初からどこかであきらめているようなトーンも感じられる。

机を2ミリずつずらしてみたり、クッキーが冷めない距離とまで言って一緒に住もうとは言わなかったり、思い切りがいいんだか悪いんだかわからない願望も、和菓子さんの短歌の魅力のひとつだ。

 

 

 

 

肉まんをはんぶんこしよ こうやって……大きい方はどっちが食べる? (根本博基)