人生ぬるま湯主義

つれづれなるままに以下略

2016-01-01から1年間の記事一覧

他者の欲望を欲望しない

この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい(笹井宏之)*1 はじめて読んだとき、よくわからない歌だ、と思った。 いまでも、よくわからない歌だ、と思っている。 だから、以下では、この短歌の「わからなさ」について、書いてみよう。・「…

一歌談欒Vol.3

一首の短歌をとりあげて、複数人でその歌について語ろうという企画「一歌談欒」。第3弾のご案内を申し上げます。 今回の課題短歌は、 この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい(笹井宏之)*1 です。この短歌をもとにして、「解釈レポー…

岡本真帆さんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

じゃんけんパー勝って飛びつくえりあしは塩素のにおい 夏が始まる 無駄なことばかりしようよ自販機のボタン全部を同時押しとか ドリンクバー押すと交互に降り注ぐコーラとコーラではない何か さわやかな風がそろりと入る網戸バリバリバリバリねこバリバリバ…

一歌談欒Vol.2まとめ

ある一首の短歌について、みんなで好きなことを語っていこうという企画、「一歌談欒」、第二回の参加エントリーまとめです。今回は、 3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって(中澤系)*1 という短歌についてみなさんに語っていただきました。…

理解できない人は下がって

3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって*1 中澤系による短歌である。駅のホームでのアナウンスだということはわかる。しかし、だとすると、いささか以上に奇妙なアナウンスだ。「3番線快速電車が通過します」。ここまではいい。しかし、僕たち…

一歌談欒Vol.2

一首の短歌をとりあげて、複数人でその歌について語ろうという企画「一歌談欒」。第2弾のご案内を申し上げます。 今回の課題短歌は、 3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって(中澤系)*1 です。この短歌をもとにして、「解釈レポート」でも「…

一歌談欒Vol.1まとめ

ある一首の短歌について、みんなで好きなことを語っていこうという企画、「一歌談欒」、第一回の参加エントリーまとめです。今回は、 おめんとか具体的には日焼け止めへやをでることはなにかつけること(今橋愛)*1 という短歌についてみなさんに語っていた…

へやをでることはなにかつけること

おめんとか具体的には日焼け止めへやをでることはなにかつけること(今橋愛)*1 生活への気づき、あるいは人生観、のようなものを詠んだ短歌です。以下で細かく見ていこうと思うのですが、注目するポイントは三点。「おめん」について、「日焼け止め」につい…

1/生存者

「1/生存者」(恋人を喪った安田短歌) 最大の山場はとうに過ぎ去ってエンドロールがまだ流れない記憶とは断片だから君でなく君の断片しか愛せない記憶とは断片だからお互いに支え合えずに剥がれてしまうセンチメンタリズムさえも錆びついて日常編に潰され…

一歌談欒 Vol.1

一首の短歌をとりあげて、複数人でその歌について語ろうという企画「一歌談欒」。企画の内容と第一回の流れについて説明します。 【企画内容】 ある一首の短歌を「課題短歌」に設定し、参加者の方々には、その短歌を読んで、短歌をもとにした文章を書いてい…

望月かすみ連作短歌「神様は熱中症」

「神様は熱中症」作:望月かすみ 君となら堕ちてゆくのを望むのに聖女に祀り上げられている 君のいう「なんでもない」は「不機嫌なわけはいいたくない」って意味だ だとしてもこれはデートだ 帰るまで歯をくいしばり笑って過ごす ふたりとも大はしゃぎした …

作者は自作を誤読する

タイトル通りの話をします。 僕自身の例をとりましょう。 不意打ちにときめいたけど恋になる人でもなくて笑って済ます という短歌についてです。 この歌を作ったのは2016年、「不意打ちにときめいたけど」という5・7ができたもののそのあとに繋げる内容が…

社会適合者さんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

この愛を僕は証明してみせる後はいくらを課金すればいい? 脱ぎたての君の下着は借りたけど変な事には使わないから 幸せは歩いてこないなら奪え たとえその手を血に染めようと 遺体とは一緒にいたい死体とはいけない事を一緒にしたい 酒好きなあいつの葬儀に…

七々那ナナさんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

太陽に向かって歩いてきてねって言われたせいで私は迷子 ゆうやけは東京タワーに盗まれた 都会の空はいま雨になる 青空のむこうのむこうのむこうにはたぶんでっかいモンゴルがある 相性の悪い男とするときは死角に入って変顔してる 「永遠にいっしょにいよう…

あんず和菓子さんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

じっくりとコトコト煮込んだ恋心 スパイスで あっ 振りすぎちゃった 法則に気づいた あたし 恋すると 苺ミルクをちょっぴり残す 2ミリずつずらした机ゆくゆくはきみの隣に着く予定です 侮れぬ小指同士のお約束 以後、積極的に使います 「漱石が好き」と綺麗…

紅絹さんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

この町は優しい嘘で出来ていて云ってはいけないことばかり有る 絡ませた指から花に成っていく病をずっと欲してるのに 音楽も流れてきたし踊ろうか 正しいだけのマシンのように 少年は少年を恋う 未だ名の付けられてない薔薇が咲く夜に ペコちゃんを盗んだ夜…

ぬこさんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

象たちの墓場のような車庫で待つ始発のバスが目を開けたとこ 暗がりの部屋で何かを踏んづけた 感触的におそらく眼鏡 きみんちの切れにくかった包丁を思い出しつつレモンの輪切り 色あせた栞がわりのレシートが語るその日のメニューはカレー 地下鉄でからんで…

ネネネさんはこんな短歌を詠んでいるんだぜ(20選シリーズ)

「ねえ先輩、酔ったふりしてキスをした女のことをどう思います?」 少しだけのんびり二度寝をした春にあの子は泣いてた ごめん、ごめんね。 失敗は大失敗に隠せって前に何かの本で読んだよ 友達の境界線を飛び越えてこっちに来てよ、ねえほらはやく 降る雨の…

根本博基自選20首

字余りの短歌みたいにぐずぐずと生きている僕だけど許してほしい マジシャンが右手に持って見せているタネも仕掛けもないはずの愛 壁もあり底もあるからプールでは優雅に泳いでいられる僕ら きっとまた立ち直ったら連絡をよこさぬ君をなぐさめている もう恋…

根本博基全短歌(2016.07.16現在)

ついったでの某企画のために、中本速さんからアドバイスをいただき、ここに現在うたよみんで自作として発表している自作(実はちょっと改訂しているものもあるけれど)を並べておくことにします。付け句なんかを除いて。130首ちょっと。たぶん。 一日ずつき…

連作短歌「ヌジャボホロ星から来た男」

明日からホームステイに来るというヌジャボホロ星人の男性 「地球へは観光ですか?」「仕事です。ケイ素が安く手に入るので」 「地球にはこれがはじめてです。空の色が違って新鮮ですね」 「話には聞いてましたが四つ脚のけものを見ると驚きますね」 「ヌジ…

はたしてワタシは喫煙者なのか

暑くなってきましたね(時候の挨拶)。 きのうは健康診断でした。病院じゃなくて、商工会議所での集団検診ですけれど。 で、健康診断といえば問診票です。病歴とか生活習慣とか記入するあれです。あれで、毎年どう書いたもんか迷ってしまう項目があるんです…

いい声してますね

ワタシが明日ちゃんと記事を書くならば— .原井 (@Ebisu_PaPa58) 2016年6月1日 はい。 このアンケートをとってからいま記事を書きはじめるまでにほんの些細なタイムラグがあったようですが、そのあたりは「ジョジョの奇妙な冒険」第一部の名台詞「あしたって…

ムーブメントに乗せられて

Twitterのタイムライン上でのブログ開設ブームに乗せられて、はらいさんもよく考えないままにはてなIDを作ってはてなブログを開設してみたのである。 だが、いまは午前1時半。 はらいさんも、すでに、けっこう眠い。 いまは週の半ばは水曜日……というか、す…