人生ぬるま湯主義

つれづれなるままに以下略

根本博基全短歌(2016.07.16現在)

ついったでの某企画のために、中本速さんからアドバイスをいただき、ここに現在うたよみんで自作として発表している自作(実はちょっと改訂しているものもあるけれど)を並べておくことにします。付け句なんかを除いて。130首ちょっと。たぶん。

 

 

一日ずつきみがあたしに染まってく まえの男の色と知らずに

 

検索の結果によれば終電はまだ先だけど逃してもいい?


おばあちゃんこれはバースデーケーキなの口でふーってしてもいいのよ


喜んでいないと言えば嘘になる思い出さずにいないでくれて


「消え去る」の比喩に煙は適さない例として嗅ぐタバコのにおい


君のその寝顔が僕に君のこと大事にさせる(無生物主語)


魔獣園みやげとしては定番の〈ドラゴンのふん〉というチョコ菓子

 

世界から観光客が押し寄せる年に一度のクラーケン漁


背中には翼の生えた恋人の上になれずに下や後ろに


夕日さす二階角部屋 水槽で人魚が語るアトランティス


飛行機で隣り合わせたスフィンクスの手元覗けば『頭の体操』


ユニコーンの飼育係をクビになる覚悟で挑むあすのデートは


競馬よりなお軽量なジョッキーが競ペガサスでは必要である


フラスコのホムンクルスをめぐる愛憎のうずまく錬金術


憧れのマユ先輩は鉢植えの食人草を俺の名で呼ぶ


恋びとは竜族 逆さの鱗には触れないように肌を重ねる


乙女だしゴーゴンだって君の眼は綺麗だねとか言われてみたい

 

ヴァンパイアでしょう貴方は どこまでも優しいだけのキスはいらない

 

サンダルのままでも走れることを知る 空はひたすら青くて遠い


正解を見つけたような顔をして私に嘘をつくのが癖ね


痛むので心の傷に気づいても何のせいかはわかんないまま


さよならを告げる言葉の残響と春の太陽 飛翔 旅立ち


明るみになった秘密に一言も言及されず終わる夕食

 

恋という字を見かけると僕はまだポニーテイルを思い出すのか

 

自分への言い訳として飲んでいる野菜ジュースも美味しいけれど


まだ恋と決まったわけじゃないけれど自炊をしたくなる日は増えた

 

終わらない夜はないから目が覚めてしまう知らない顔の隣で


戯れが罪と呼ばれるこの街では万華鏡すらまことを映す

 

「君のため」なんて気安く言わないで。ねえ、あの鳩を撃ち落としてよ


「好きです」じゃなくて「好きかも」なんて言うあなたのことはキライかもです


期待していいけどあとで傷ついた顔しないって約束してね


三組の児島の右に出るものはいない 雑巾がけの速度で


幸せなキスで終われる童話ではないと知りつつ交わす口づけ


誰かへの好意とかではなくこれは優しさという名の処世術


お互いにあたためあえる二人ではなくて凍えて迎える夜明け


迷惑をかけまいとして閉じこもる殻で誰かを傷つけていた


焼きそばを焦がしてしまいフライパンからの訴状にふるえて眠る


「海なんてぼくは知りたくなかった」とカエルは井戸に帰宅しました


あの人が食べた果実の種ばかりお庭に植えて育ててみたい


「そういえばコレまだ言ってなかったね。あたしあんたのこと大嫌い」


まわれ右してもいいけど回数は偶数回というのがルール


上等だ 投げられた石が当たっても全部笑って流してみせる


そうやってすぐに落ち込みたがるのは君に限った話ではない


送ろうか迷ってやっぱ送らないことにしてから書き出す手紙


わたしたち見えないふりが多すぎた ガラスの靴はもう入らない


浴衣って歩きにくくて帰り道余計に時間かかるから好き


「暑いよね」「溶ける」「溶ける」と笑いあい溶けて混ざれはしない僕たち


夕立が降ってあわてて雨宿りしながらどうか好きって言って


見えますか? 心に穴が開いていて人ひとりなら通れそうです


会うために四時間かかる日々だった 今じゃ七千円かかる距離


簡単に揺らぐ自分でありたくて一人称はひとつにしない


天国ってつまらないのね。大好きな人がだぁれもいないんだもの。


言外の意味ってやつを都合よく解釈しては苦しんでいる


いつだって君が正しいことぐらいわかってるから黙ってほしい


太陽が眩しいせいだ こんなにも君の犬歯をしゃぶりたいのは


とげのある言葉で人を傷つけて優しい気持ちになりたい夜だ


あの人の背中ばっかり見つめてた(顔は好みに合わなかったし)


落ち込んでるときにいつでも励ましの言葉をくれるあなたが嫌い


吊り橋のせいだとしても気のせいじゃないと思った胸の高鳴り


ついさっき頼んだはずの熱燗がもう冷たくてあなたは無言


カップ麺にお湯を注いで待ちましょう 世界平和が訪れるまで


キレイゴトだと知っていて信じてた 綺麗なものは好きよ 何でも


君の傘大きめだから夕方の雨の予報は見なかったふり

 

優しさや愛や慈しみがほしい レプリカだって構わないから


ぬくもりがほしくて買った自販機のホットココアも冷めてしまった


僕のこと好きだとか言うあの子には後先考えない癖がある


同じ道同じ歩幅で歩いてるような二人でいれますように


隠しごとしないっていう約束をしたから秘密があるのは内緒


人生の転機がもしもあるならば今日訪れてくれますように


おさるからホモサピエンスに進化したときが僕らのピークでしたね

 

きっとまた立ち直ったら連絡をよこさぬ君をなぐさめている


僕のこと全部わかっているつもり? なるほど君はそういうやつか


大嫌いなあなたもどうか幸せになれ(わたしとは遠いところで)


食パンの耳を棄ててはいけないよ火星じゃそれは重罪になる


左手の薬指には誓約のしるしとしてのフレンチクルーラー


けんかしたあとはジャンケンする決まり パーであいこになったら握手


知りたくもない咎ごとを明かされる 正直さなど美徳ではない

 

通勤に使うダチョウが逃げちゃって仕方ないからラクダを買った

 

お風呂にてバブを入れればなぜでしょう湯船に満ちるファンタオレンジ

 

タクシーを呼んで空飛ぶ絨毯に乗ったおやじが来たからあせる


怪獣が上陸するって警報が出たので午後の授業は休み

 

ぬばたまの黒髪少女がくれたので窓辺に鎮座するラフレシア

 

夕焼けがすっかり雲に溶けたのであすは真っ赤な雨の予報です

 

天界の戦はやまず人びとのおうちの屋根に天使の骸

 

そのタバコどんな味って尋ねれば唇を指し薄くほほえむ


このビールぬるいねなんて笑いつつ枝垂桜の下で二人は


生い立ちを知り苦悩するクローンに「ソープへ行け」と北方謙三


不意打ちにときめいたけど恋になる人でもなくて笑って済ます


提案を拒む理由がないことが受ける理由になるはずもなく


もう二度と会わないことにした人と街で出会ったときのイメトレ


傷ついたわたしに優しい人がいて痛いの痛いのこの指とまれ


人は死後無になるらしい 宇宙って最初は無から生まれたらしい


正しさに価値があるのは正しさを好きな人らがいるからだろう


壁もあり底もあるからプールでは優雅に泳いでいられる僕ら


あの人にわたしこっそり惚れ薬飲まされたのよじゃなきゃ変だわ


関数のグラフにコーヒー牛乳が垂れるいきなり好きとか言うから

 

もう恋じゃないと感じる一方で抱きしめたいと思ってしまう


二学期もはじまっちゃったし夏物の恋はそろそろ割引される


彼といるときしかしない顔があるだなんてあなた気づいてないの


シャーペンの芯を出すとき絶対に長さが中途半端になること


完璧な口説き文句をもうすぐで思いつくからそこにいてくれ


雨の日に桜を見てた 花びらが次々落ちていくのを見てた


好まざる展開があり直視する準備で付けている「案の定」


嘘だったことにしようよ約束も恋も出会いも世界も全部


なんかもう色々無理で土砂降りの雨が唯一わたしの癒し


納得し枯れている木に灰をかけ無理に咲かせるのは禁止です


否定してやりたい奴がいてたぶん理由は嫉妬とかなんだけど


泣き顔は見せてやらない 最後まで背中のばして前向いて立つ


丁寧に急須でお茶を淹れている 次の電話で君とは終わる


悲しみは時が癒すと聞いたので樽のワインと共におやすみ


殺された名探偵が暗号で遺したメモを誰も解けない

 

密室となった書斎に残された鍵と死体とわたしの指紋


〈二時間後消えるナイフ〉を使ったが入手経路を特定される


公園の桜の下を掘ったのに死体がなくて調達にゆく


妹が消えてよりのち家族では行かなくなった裏山の沢

 

「犯人は自己催眠で凶行の記憶をすべてなくしたのです」


適当な動機も作る トリックが試したかっただけとも言えず

 

「被害者はみんな前世がマングース? ホシは前世がハブの奴だな」


マジシャンが右手に持って見せているタネも仕掛けもないはずの愛


偏差値も君の気持ちも変えられず夏期講習はもうじき終わる


「こんにちは。通りすがりの者ですが僕と結婚しませんか」「はい」


悟りとは遠いところで繰り返す禅問答のようなやりとり


オモイデの写真は残る いつどこでなぜ撮ったのか忘れたあとも


字余りの短歌みたいにぐずぐずと生きている僕だけど許してほしい

 

生きづらい世の中ですが死にづらい諸事情もあり生きてゆきます

連作短歌「ヌジャボホロ星から来た男」

明日からホームステイに来るというヌジャボホロ星人の男性


「地球へは観光ですか?」「仕事です。ケイ素が安く手に入るので」


「地球にはこれがはじめてです。空の色が違って新鮮ですね」


「話には聞いてましたが四つ脚のけものを見ると驚きますね」


「ヌジャボホロ星といっても広いので国や文化もいろいろですよ」


異星より来たる男が住む国の名前を書ける仮名がないこと


異星より来たる男が母国語で話すしらべは雅楽にも似る


異星より来たる男が舞う 違う 翻訳機電池切れのサインだ


異星より来たる男が熱心にカメラを向けるシンクの蛇口


異星より来たる男と妻の愚痴を語ったのちに交わした握手


「有機物製のメディアは希少です。それは? システム手帳? なるほど」


〈ヌジャボホロ星人用の食事には塩の使用は厳禁のこと〉


アルコールにて酔っぱらう我々のようにカロテンにて彼は酔う


人前でパンツを脱がぬ我々のように帽子を彼は脱がない


「地球では自転が少し速いので急かされている気になりますね」


「僕の住む国にも四季がありますが日本はずっと秋って感じ」


「お土産にします」と笑う彼の手のポケットティッシュで笑うデリ嬢


書店にて旅行雑誌を眺めれば飛びこんでくるヌジャボホロツアー


ヌジャボホロ旅行は妻の名において却下「あの星臭いんでしょう?」


星空を見るヌジャボホロ星にいる七本脚のけものを思う

はたしてワタシは喫煙者なのか

暑くなってきましたね(時候の挨拶)。

 

きのうは健康診断でした。病院じゃなくて、商工会議所での集団検診ですけれど。

で、健康診断といえば問診票です。病歴とか生活習慣とか記入するあれです。あれで、毎年どう書いたもんか迷ってしまう項目があるんですよねー。何かというと、「喫煙」の項目です。

もう提出しちゃったんで手もとにはありませんが、問診票にはこのようにあります。「あなたは煙草を吸いますか? 1.いいえ 2.はい 1日(  )本」と。

んん~、煙草を吸いますか?と問われれば、答えは「はい」です。禁煙したつもりもするつもりも今んとこありません。でも、僕の喫煙ペースは〈1ヶ月に一箱吸うか吸わないかぐらい〉。酔ったときか疲れてるときしか吸いませんし、自宅の中でもすいません。となると会社の休憩時間に数本吸うときがあるか、あとはだいたい飲み屋で吸うことになります。朝まで飲んでるような日は口寂しさも手伝って一晩で一箱吸ってしまう日がある一方で、吸わない時期は二ヶ月ぐらい吸いません。

話を戻して、たいていの銘柄で煙草が一箱20本入りだというえことを考えると、平均にならせば1日1本未満の計算です。まさか少数で書くわけにもいかねえしなあ……と頭を悩ませ、メンドクサくなって毎年「いいえ」に丸を書いてます。

 

ここでググって厚労省のPDFを参照すると、

特定健診の標準的な質問票では「現在、習慣的に喫煙している者」の定義として、「合 計 100 本以上、又は 6 ヵ月以上吸っている者であり、最近 1 ヵ月間も吸っている者」 と定めています。

と書いてあります。そうそう、たしかにそう書いてあったような気がします。僕の場合、最後に煙草吸ったのはゴールデンウィークに帰省して地元の友だちと飲んだときに2、3本吸ったっきりですから、最後の「最近1ヶ月間も吸っている者」には当てはまらないので「喫煙の習慣はあるが、習慣的に喫煙しているわけではない者」ということになりそうです。

 

特にオチはないですが今回はこれでオヒラキ。気が向いたらまた今度煙草の銘柄の話でも。

いい声してますね

 

はい。

このアンケートをとってからいま記事を書きはじめるまでにほんの些細なタイムラグがあったようですが、そのあたりは「ジョジョの奇妙な冒険」第一部の名台詞「あしたっていまさッ!」を引用することによってうやむやにさせていただきます。

 

週末なんかにひとりで飲みにいき、といっても行き先はほとんどの場合、馴染みのお店。店員さんや同じく常連の人たちと会話しながら飲んでいることが多いのですが、そんなタイミングで初対面の方ともお話する機会があると、決して低くない頻度で言ってもらえる言葉が「いい声してますね」。

その評価自体は大変にありがたく、このごろはようやく自分でも「すると僕の声は世間的に”いい声”といって問題ない声なのだな」と思えるようになって、さらっと「あ、本当ですか。ありがとうございます」と返せるようになってきたわけですが、ん~、どうなんでしょう。はたしてそれは喜ばしいことなのか。

 

喜ばしいことではあるんでしょうけれども、しかし、嬉しいことなのかどうかと問われれば、「ビミョ~」かもしれません。

第一に、まあ、これは多くの人も同じことを思うんでしょうけれど、僕は自分の声がそんなに好きではない……少なくとも、「こういう声だったらよかったな」という声からは少し外れるもんですから、その自己評価とのずれという原因が挙げられます。

自分の声の録音を聞くのは、大学生だったころにやっていた芝居の録画をはじめ、それなりに機会があるもんですから、「骨伝導で聞いている自分の声より録音された自分の声の方が低く聞こえる現象」への違和感はそれほどないんですけど、そもそも自分がしゃべっている最中に”聞こえて”いる自分の声よりも少し高めの声が”相手に聞こえている声”ぐらいだと理想的だなー、という感覚がぼんやりあるもんですから、皆様に声を褒めていただいても「でも、その声よりよさげな〈声像〉、あるんだよね~……」となってしまうのは致し方ない。

第二に、声って、生得的なものじゃないですか。もちろん、声の出し方や母音子音の発音のクセみたいなものは後天的に決定されてきたものとはいえ、声帯の構造自体は、これはもう生まれ持ってのものとしか言いようがない。なんというか、自分が何も努力してなくてあらかじめ持っているものを褒められても……ねえ。それだったら僕は、顔の方を褒めてもらいたいです。「かっこいい顔してますね」とか「きれいな顔立ちですね」とか。そんな言葉をかけてもらった経験、ありませんけど。

 

やっぱり、声を褒めてもらえるよりは、たとえば演技とか短歌を褒めてもらえる方が嬉しいです。居酒屋なんかではじめてお会いした方に演技や短歌を披露する機会がはたしてあるのか、という問題はさておいて。

 

何よりも問題なのは親密になった人ほどに「いい声してますね」から「声はいいですね」、さらには「声だけはいいのにね…」という具合に評価が変化していく僕のチープな人間性なのではないか、という可能性からはスタイリッシュに目をそらしつつ、この記事はここらでおしまいにしたいと思います。

ムーブメントに乗せられて

Twitterのタイムライン上でのブログ開設ブームに乗せられて、はらいさんもよく考えないままにはてなIDを作ってはてなブログを開設してみたのである。

 

だが、いまは午前1時半。

 

はらいさんも、すでに、けっこう眠い。

 

いまは週の半ばは水曜日……というか、すでに木曜日である。ここで、長々と「ちゃんとした記事」を書きにかかるのは危険な行為でしかない。

 

何? だったらブログ開設自体もっと余裕のあるときにしておけ?

まっこと正論。

はらいさんは、正論を好まない。少なくとも言われる方は。

 

 

 

 

人生ぬるま湯主義。

 

 

 

ぬるま湯にぬくぬくと漬かっていられるためになら、はらいさんは、煮え湯につかる努力も惜しまぬ覚悟である。