人生ぬるま湯主義

つれづれなるままに以下略

根本博基自選20首

字余りの短歌みたいにぐずぐずと生きている僕だけど許してほしい

 

 

マジシャンが右手に持って見せているタネも仕掛けもないはずの愛

壁もあり底もあるからプールでは優雅に泳いでいられる僕ら

 

きっとまた立ち直ったら連絡をよこさぬ君をなぐさめている

もう恋じゃないと感じる一方で抱きしめたいと思ってしまう

 

まわれ右してもいいけど回数は偶数回というのがルール

サンダルのままでも走れることを知る 空はひたすら青くて遠い

 

乙女だしゴーゴンだって君の眼は綺麗だねとか言われてみたい

ユニコーンの飼育係をクビになる覚悟で挑むあすのデートは

 

迷惑をかけまいとして閉じこもる殻で誰かを傷つけていた

誰かへの好意とかではなくこれは優しさという名の処世術

 

おさるからホモサピエンスに進化したときが僕らのピークでしたね

カップ麺にお湯を注いで待ちましょう 世界平和が訪れるまで

 

お風呂にてバブを入れればなぜでしょう湯船に満ちるファンタオレンジ

夕焼けがすっかり雲に溶けたのであすは真っ赤な雨の予報です

 

殺された名探偵が暗号で遺したメモを誰も解けない

密室となった書斎に残された鍵と死体とわたしの指紋

 

吊り橋のせいだとしても気のせいじゃないと思った胸の高鳴り

まだ恋と決まったわけじゃないけれど自炊をしたくなる日は増えた

 

 

生きづらい世の中ですが死にづらい諸事情もあり生きてゆきます

 

 

 

 

 

 

130首から20首選ぶということは裏を返せば100以上捨てるということで、その限られた数の歌をどう配置すればよいのか、非常に悩ましい。もっと作品の点数が多い人の20選なんか、それはそれは大変な苦労をして20首残したのだな、と自分でやってみて思った。

今回の構成は、「ベストアルバム」にはしなかったつもり。はっきりと、あるいはぼんやりと、テーマを同じくしている短歌をセットにして2首ずつ並べてみた。だいたいこんな短歌を作ってます、って自己紹介?になるようにしてみたのだが……はたして、うまくいっているだろうか。